対蹠点|アンティポード,はるかなきみへ | Exhibition | 落合陽一公式ページ / Yoichi Ochiai Official Portfolio      
Yoichi Ochiai

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対蹠点|アンティポード,はるかなきみへ

日伯外交関係樹立130周年

Antipodes: faraway, so close

130th Anniversary of Japan-Brazil Diplomatic Relations

キービジュアル

Artist Statement

「リキッドユニバース:計算機が蝶へほどけ質量になるときの憧憬」
本作は、計算機自然が生む流動が、蝶という形態へと「ほどけ」、さらに静止画面へ沈降するその距離を扱う装置である。生成AIが生成する可塑の像は、潜在空間という連続体をたゆたい、翅脈のグラフへ、燐粉のノイズへ、構造色のスペクトルへと写像される。だが、像はいつか止まり、重くなる。金属的支持体や厚手の紙面へ転写されるとき、光は遅延を獲得し、計算は手触りに変換され、記憶は質量を持つ。ここで「リキッド」は否定されない。むしろ流動は固定という儀式によって可視化され、動かない絵画モチーフとして二次の生命を得る。計算機が蝶の夢を見るとき、世界は波形から器へと遷移し、情報は憧憬として掌に残る。光は重く、沈黙は鳴る。これは、デジタルが質に帰るその瞬間を、手取りの重さとして確かめるための作品である。

「茶室は 事事無礙庵:映像と質量の四句分別」
本作は、茶室という最小の記号宇宙に、映像と質量の四句分別を実装する試みである。有/無/亦有亦無/非有非無。在るのは器であり、無いのは像であり、両者は半透過の界面で交錯し、最後に在でも無でもない場として感覚に現れる。床の間はUIであり、掛物・花・器がプロトコルとして機能する。そこへ流体的な映像を導入すると、茶室は騒即是寂・寂即是騒の往還を始め、音と影と手取りが位相をずらしながら相即する。計算機は無限の記号宇宙を探索し続けるが、手触りの遅延がその探索に地平を与える。ここで映像は場の質量として把持され、質量は意味の流体として解像される。四句は論理であると同時に空間プロファイルであり、時間によって入れ替わる。結果、茶室は事事無礙のモデルとして、デジタルと物質の新体制を静かに先取りする。像は風に解け、器は空を映し、在不在の設計が一碗の温度として手に戻る。

Date
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Venue
Sesc Vila Mariana (サンパウロ, ブラジル)
Organizer
国際交流基金(JF)/ ブラジル商業連盟社会サービス(Sesc)
Others
キュレーター:森山朋絵(東京都現代美術館学芸員)
協力:パナソニック株式会社デザイン本部
Web Site
https://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/oversea/2025/09-01.html