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Yoichi Ochiai

nullの木漏れ日

Mixed Media, Video

2022

nullの木漏れ日のキービジュアル nullの木漏れ日のキービジュアル

nullの木漏れ日
Sunbeam of null in Forest

Exhibited at
落合陽一「nullの木漏れ日」2022年, 展示風景:大手町の森
3D Phantom提供
株式会社Life is Style
Media
3D Phantom

都市の中心、大手町の森において、「nullの木漏れ日」というインスタレーションを展開した。計算機自然の視座から、都市と森、存在と無、デジタルと自然の境界を探求する試みである。

木漏れ日は、森の中で木々の葉が重なり合い、太陽の光が複雑なパターンとなって地上に投影される現象である。その一瞬一瞬が織りなす光と影の揺らぎは、万物の無常と自然の深遠さを象徴している。そして、その光と影の間隙には、「ヌル(Null)」——計算機科学における未定義や無を意味する概念——が潜んでいる。ヌルは存在しないことの象徴でありながら、新たな可能性や創発の源泉でもある。

本作品では、LED回転装置を用いて、木漏れ日の持つ儚くも美しい光をデジタル的に再解釈した。高速回転するLEDが生み出す光の軌跡は、空間に浮かぶ可視化された時間のようであり、物質としての質量を持たない光が織りなす立体的な形態は、観る者の感覚を揺さぶる。これは、計算機自然における物質と非物質の融合、存在と無の交錯を表現している。

都市という人工的な環境と、森という自然が隣接するこの場所で、デジタル技術によって生み出された光の木漏れ日は、街と森、人間と自然、そしてテクノロジーと精神性の相互作用を体現している。計算機自然の理念に基づき、デジタルと自然が織りなす新たな風景を提示することで、観る者に持続可能な未来への思索を促したい。

持続可能性は、現代社会が直面する重要な課題である。デジタル技術は、一見するとエネルギー消費や環境負荷を増大させるように思われがちであるが、計算機自然の視点からは、デジタルと自然は対立するものではなく、共生し得る関係であると捉えることができる。LEDによる光の演出は、最小限のエネルギーで最大限の効果を生み出し、物質的資源の消費を抑えることが可能である。これは、テクノロジーを活用した持続可能性の新たな形を示唆している。

「nullの木漏れ日」を通じて、私は観る者に、存在しないものの中に潜む可能性や、美しさに気付いて欲しいと願っている。ヌル(無)から生まれる光が、都市の中の森に新たな風景を創出し、デジタルと自然、街と森、人間と計算機の境界を超えて、新たな世界観を提示する。この作品が、計算機自然の時代における私たちの存在や環境との関わり方を再考する契機となれば幸いである。

nullの木漏れ日の画像1
nullの木漏れ日の画像2

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