Mixed Media, Video
2025
「ヌル鏡止水」は、走馬灯という人生の残響を“デジタルの水鏡の下”に可視化する作品だ。LEDキューブの上面を透過する映像は、まるで水鏡の向こうにある記憶の断片が立ち上がるように揺らぎ、“null”の無から生まれては消える。私は物化する計算機自然と対峙し,質量と映像の間にある憧憬や情念を反芻してきた。質量をもたないデジタル映像が、生活空間に溶けるオブジェクトとして展示され、象徴される物質性との境目に漂いファントムレゾナンスを続けることで、不明瞭な輪郭を得ながら観る者の内部に浸透していく。そこには、不定形であるがゆえの儚さと、有限性ゆえの愛おしさが同居する。人生の閃光としての走馬灯が、水鏡に映る自分自身の姿と結びつき、“明鏡止水”の静謐の中で、形なきはずの記憶や情念が再び姿を帯びる――それは、計算機自然が曖昧に溶け合う世界でこそ成り立つ、新たな「有と無」のかたちである。
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