Mixed Media
2021
この度総合演出を務めさせていただきます、落合陽一です。
多くの人々が携わる芸術祭で総合演出の仕事をさせていただけること大変光栄です。
今回の芸術祭の中心都市である北九州では本年度春に芸術祭の中で個展をさせていただき、北九州の
文化やアジアの文化のハブとしての機能、日本の産業革命の礎となった工業性と自然が融和する街と
いう感覚を覚えています。
自分はアーティストとして、境界領域における物化や変換、質量への憧憬をモチーフに作品を展開し
てきました。それは質量ある世界と質量のないデータの世界の調停により風景を調和させるインスタ
レーションの制作やデジタル時代の新しい民藝的創作行為の継続によるライフスタイルの探求です。
質量ある自然と質量ない自然の調和によって作られる未だ名も無い新しい自然環境「デジタルネイ
チャー」における技術や文化を探求し続ける研究者でもある自分は、持続可能な社会に向けて作家活
動と研究活動の両輪で探索を続けています。
日中韓の文化の根底に流れているものを考えたとき、真っ先に浮かんだのは物化・華厳・民藝・侘寂
などの東洋的美的感覚と世界観の中に構築される持続可能なデジタルの自然です。COVID-19の災禍
で加速し、リモートコラボレーションが当たり前になった時代、1980年のナムジュンパイクの言葉を
借りれば「定在する遊牧民(stationary nomad)」とも言える我々は、地球上のあらゆるところから
デジタルの自然に接続され,共生し饗宴することができるようになりました。
我々がこの時代に喪った質量への憧憬とは何か、持続可能性を批評するために立ち戻る場所としての
襤褸の質感、持続可能性から遠い場所にあった現代のファッションと日本旧来のファッションとの
親和による新しいビジョン、身体性を必ずしも伴わない映像としてのショーの持つ幽玄な身体性、
そういったキーワードを拾い集め、メディア装置で重層的な表現を構築しようと務めてきました。
それはデジタル時代に花開く、時空間を超えたパッチワークです。
ファッションブランド、メーカーの方々、襤褸のアーカイヴコレクション、にもお世話になりまし
た。スタッフを代表してここに感謝を述べたいと思います。デジタル時代のパッチワークがみせる
持続可能性や身体性・質量への憧憬からなる表現が、日中韓の根底にながれるアジア文化の霊性を
惹起し、それが文化的な友好を作り出すことを祈って。身体的に分断された時代に定在する遊牧民の
ような軽やかさで表現する喜びが伝わることを信じています。
持続可能性と霊性―残響する軀と襤褸―へのお問い合わせは、当サイトのContactページのフォームよりお問い合わせください。
For inquiries about this art installation, please use the form on the Contact page of this site.