Performing
2020
計算機時代の赤子のような,分断されたオーケストラと新しいデジタルの地平
Reborn to Digital Nature
オーケストラが分断される.今までと同じ形を作れなくなる.メロディも,ハーモニーも,体験も,感覚も,分断された世界で今まで通りに味わうには難しい.
距離の制約を電子技術を経由して取り戻そうという動きがある.多くの試みが流刑状態にある人々を癒すために,空間を超えて行われている.不意に現れたデジタルの自然への橋梁を前にして,世界の手触りを失ってしまっていることに気がつく.世界が今や質量への憧憬の中にあり,その憧憬がもはや郷愁へと変わりつつある.この現状に我々は満足していない.
我々はこの時空間的な分断に対して,実験と共有の連続こそがこの新しいデジタルの地平に生まれ直した時代にとりうる,手立てだと真摯に考える.我々は身体性を切り離したデジタルの地平で,オーケストラを聴くこと,見ること,共有することについて,実はまだ何も知らないことを,毎日明らかにしていくのだ.デジタルの地平から,改めてこの世界の触覚や調和を取り戻す作業は,世界を赤子が認識していく姿に似ている,初めてバイオリンを習ったときのあの窮屈さや,初めてピアノを褒められたあの奥ゆかしさに似ている.
繋がること,隣人を愛すること,夢を抱くこと,希望を持つこと,様々な大切さがある.我々はその中で,世界に生まれ落ちた赤子が,世界を触りながら愛していくように,オーケストラの原義に立ち戻りながら,デジタルの触覚や共有空間に対する想いを結実させていく.今我々が目指すのは,実験と共有の繰り返しからたどり着くはずの,名前のまだない,幼子の初めての発表会だ.
ベートーヴェン:交響曲第7番 第 4 楽章(1811)
ハイドン:交響曲第 45番《告別》第 4 楽章(1772)
ガブリエリ:ダブル・エコー効果の12声のカンツォン(1615)
ペルト:フラトレス(1977/ 1991)
藤倉大:Longing from afar (2020)
─ 世界のオーケストラ・プレーヤーとともにー ─
ストラヴィンスキー:組曲《兵士の物語》(1918)
Ludwig van BEETHOVEN: Symphony No.7, 4th movement
Franz Joseph HAYDN: Sinfonia No.45,“Abschied” 4th movement
Giovanni GABRIELI: Canzon in Echo Duodecimi Toni a 12
Arvo PÄRT: Fratres
FUJIKURA Dai: Longing from afar
Igor STRAVINSKY: L'Histoire du soldat
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