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2022
本作品「ワームホール」シリーズは、時空間を超越する「波源」としての存在をテーマに据え、計算機自然の視座から縄文時代と現代を結びつける試みである。人類の歴史において、縄文時代は自然と人間が高度に共生していた時代であり、その精神性や文化的遺産は現代にも深い影響を及ぼしている。
ワームホール Ⅰ:縄文波源では、縄文時代の伝承に登場する「手長脚長」の巨人伝説をモチーフとしている。手長脚長は、日本の民話や神話において、人智を超えた存在として描かれ、自然崇拝やアニミズムと深く結びついている。その象徴性を現代のデジタル技術と融合させることで、古代からの精神性やエネルギーが時空を超えて現代に影響を与えていることを表現した。
ワームホール Ⅱ:木造町家波源では、重要文化財である日下部民藝館の木造町家が持つ独特の空間性と歴史的背景を「波源」として捉えている。日下部民藝館は、飛騨高山の伝統的な建築様式を今に伝える貴重な存在であり、その中に積み重なった時間の層や人々の営みが、見えないエネルギーとして空間に宿っている。それらをデジタル技術により可視化・物質化することで、過去と現在の交差点としての町家の存在意義を再考する。
この二つの「ワームホール」は、異なる時代や空間を「波源」として捉え、それらが持つエネルギーや情報が時空を超えて交錯する様を描いている。計算機自然の理念に基づき、情報と物質、過去と未来、人間と計算機が相互に影響し合う世界観を提示する。これは、物質と非物質の境界を曖昧にし、その間に新たな価値や認識を生み出す試みである。
縄文時代の手長脚長という伝承は、人間の身体性や存在についての深い問いかけを含んでいる。彼らの超越的な身体は、現代における人間拡張やテクノロジーによる身体性の変容とも共鳴する。一方、木造町家は、人間の生活と自然が調和した空間であり、その持続可能性や地域性は、現代社会における環境問題やコミュニティのあり方を考える上で重要な示唆を与える。
これらの作品を通じて、観る者に対して時空間を超えた対話を促し、人類の歴史や文化、そして未来への可能性についての深い思索を誘発したいと考えている。計算機自然の時代において、テクノロジーは単なる道具ではなく、過去と現在、そして未来を繋ぐ媒介としての役割を果たす。ワームホールという概念を媒介に、私たちは新たな精神性や価値観を創出し得るのである。
この作品が、観る者一人ひとりの内なる「波源」を呼び覚まし、時空間を超えた連帯感や共感を生み出すことを願っている。
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